『ザックの重さは命の重さ』
9月某日、夕刻。 鳥海山のガイド山行で湯ノ台口に下山中、一緒になった他の中高年パーティの方に「ガイドさんはいますか」と尋ねられました。お話を伺うと、「今朝早朝に入山した時に放置されていたザックがまだ置かれたままになっている。そばに食べたバナナの皮が捨ててあり、今日入山した人の物と思われるが、この時間帯になっても放置されたままなのはおかしい、どうしたらよいか」というご相談でした。
放置されたザックの持ち主を心配する登山者グループに、自分は地元山形のガイドであること、関係方面に連絡すること、現状では遭難者のものか判断する根拠もないので現状のまま残置することをお話し、一旦その場は解散としました。近くに捨てられていたバナナの皮は私が回収。ザックのサイドポケットには折りたたまれた地図が入れてあり、全くこの場所にデポする意図がわかりません。しかも置かれている場所は登山道のど真ん中です。
ツアーガイドの最中だったため、遅れている方のところに戻ろうとその場から登り始めると、上の方から「ザックあったー?」と声が聞こえてきました。若い男性2人組でした。声をかけ確認すると、どうやらザックの持ち主の様子。まだ近くを下山中だった発見者パーティにも持ち主見つかった旨声をかけ、一件落着となりました。
当会の公式ブログで個人を批判する意図はありませんが、軽量化のためメインザックをデポ(今回の場合はどうみても放置)して山頂に向かうのは、安全面から考えても理解しがたいことです。鳥海山のような比較的ロングコースの山に限らず、登山では天候の急変はじめ様々な条件に対応できる装備を手放すことは、リスクをむやみに高める行為です。
ガイド資格を戴いたばかりの頃、ガイド山行を共にした当会の高村真司代表から言われた言葉が「大滝君、ザックの重さは命の重さだよ」。 そんなことを思い返しながら、秋の気配の鳥海山を下りて行きました。 (文責 大滝 勝)